ウェブ3のインフラを分散化されたデータとサービスで構築する方法

話題

ウェブ3とは、インターネットの次世代のパラダイムであり、ユーザーが自分のアイデンティティ、データ、資産を管理し、中央集権的なサービスプロバイダーに依存せずにウェブのサービスを利用できるようになるものです。ウェブ3のビジョンを実現するためには、数十億人のユーザーに対応できるスケーラビリティ、分散化されたセキュアな環境、持続可能なインセンティブ構造を備えた基盤となるインフラ層が必要です。

ウェブ3のインフラ層を構築するためには、従来のウェブ2のサービス(クラウドコンピューティング、ストレージ、ネットワーキング、データベースなど)を分散化する必要があります。分散化されたサービスは、中央集権的な障害点を排除することでセキュリティとプライバシーを向上させるとともに、ネットワークの参加者にデータと情報の所有権を返し、その運用に貢献することで収益を得ることができるようになります。

この記事では、ウェブ3のインフラ層を構築するために必要な技術、ツール、プロトコルについて紹介します。ウェブ3のインフラ層は、主にブロックチェーンと分散化されたストレージから構成されます。ブロックチェーンは、ウェブ3のアプリケーションのビジネスロジックと状態を分散化されたノードによって管理される不変の台帳に記録します。分散化されたストレージは、ウェブ3のアプリケーションのデータとコンテンツを分散化されたノードによって安全に保存し、アクセスします。

ブロックチェーンの選択

ウェブ3のアプリケーションを構築するためには、まずブロックチェーンのネットワークを選択する必要があります。ブロックチェーンのネットワークは、ウェブ3のアプリケーションの基盤となるプラットフォームであり、スマートコントラクトと呼ばれるプログラムを実行することで、ウェブ3のアプリケーションのロジックと状態を記録します。ブロックチェーンのネットワークは、多くの場合、レイヤー1とレイヤー2に分類されます。レイヤー1は、ブロックチェーンの基本的なプロトコルを定義するネットワークであり、レイヤー2は、レイヤー1の上に構築されるネットワークであり、レイヤー1のスケーラビリティやセキュリティなどの課題を解決することを目的としています。

ブロックチェーンのネットワークを選択する際には、以下のような要素を考慮する必要があります。

  • スマートコントラクトの開発言語と環境
  • トランザクションのスピードとコスト
  • セキュリティと分散化の度合い
  • エコシステムの規模と成熟度
  • 相互運用性と互換性

ブロックチェーンのネットワークは、スマートコントラクトの開発言語と環境によって、Ethereum Virtual Machine (EVM) 互換のネットワークと非EVM互換のネットワークに分けることができます。EVMは、Ethereumが開発したスマートコントラクトの実行環境であり、Solidityという言語で書かれたスマートコントラクトを実行できます。EVM互換のネットワークは、Ethereumと同じソフトウェア層を共有していますが、コンセンサスメカニズムやトランザクション速度などに違いがあります。EVM互換のネットワークは、Ethereumのエコシステムとの相互運用性や互換性が高く、開発者やユーザーのベースも大きいです。EVM互換のネットワークの例としては、以下のようなものがあります。

  • Binance Smart Chain (BSC):Binanceが運営するEVM互換のネットワークであり、高速で低コストのトランザクションを提供します。しかし、セキュリティや分散化の度合いは低く、中央集権的な要素が多いという批判もあります。
  • Polygon (MATIC):Ethereumのレイヤー2ソリューションの一つであり、EVM互換のサイドチェーンとプラズマチェーンを提供します。Ethereumのネットワークの混雑や高コストを回避することができますが、レイヤー1と比べるとセキュリティや分散化の度合いは低くなります。
  • Solana (SOL):高性能で低コストのブロックチェーンプラットフォームであり、Proof of History (PoH) という革新的なコンセンサスメカニズムを採用しています。EVM互換ではありませんが、EthereumとのブリッジやEVM互換のレイヤーを提供しています。

非EVM互換のネットワークは、Ethereumとは異なるスマートコントラクトの開発言語と環境を持つネットワークです。非EVM互換のネットワークは、Ethereumとの相互運用性や互換性が低いという欠点がありますが、Ethereumとは異なる特徴や利点を持っています。非EVM互換のネットワークの例としては、以下のようなものがあります。

  • Polkadot (DOT):分散化されたアプリケーションを構築するためのネットワークオブネットワークであり、異なるブロックチェーンを相互に接続することができます。Polkadotは、パラチェーンと呼ばれる独自のブロックチェーンを作成することができ、それぞれが異なるプログラミング言語やコンセンサスメカニズムを採用できます。Polkadotは、分散化、スケーラビリティ、イノベーションを高めることを目指しています。
  • Cosmos (ATOM):インターブロックチェーンコミュニケーションプロトコル (IBC) を用いて、異なるブロックチェーンを相互に接続することができるネットワークです。Cosmosは、Tendermintというバイザンティンフォールトトレラント (BFT) のコンセンサスエンジンと、Cosmos SDKというブロックチェーン開発フレームワークを提供しています。Cosmosは、分散化、スケーラビリティ、相互運用性を高めることを目指しています。
  • Cardano (ADA):科学的なアプローチと形式的な検証に基づいて設計されたブロックチェーンプラットフォームです。Cardanoは、Ouroborosというプルーフオブステーク (PoS) のコンセンサスアルゴリズムと、Haskellという関数型プログラミング言語を採用しています。Cardanoは、セキュリティ、スケーラビリティ、持続可能性を高めることを目指しています。

分散化されたストレージの選択

ウェブ3のアプリケーションを構築するためには、ブロックチェーンのネットワークに加えて、分散化されたストレージのネットワークも選択する必要があります。分散化されたストレージのネットワークは、ウェブ3のアプリケーションのデータとコンテンツを分散化されたノードによって安全に保存し、アクセスすることができるネットワークです。分散化されたストレージのネットワークは、従来の中央集権的なクラウドストレージと比べて、以下のような利点を持っています。

  • セキュリティとプライバシー:データとコンテンツは暗号化され、分割され、冗長化されてネットワークに分散されるため、ハッキングや検閲に対して耐性があります。また、データとコンテンツの所有権とアクセス権は、ブロックチェーンによって保証されます。
  • パフォーマンスと信頼性:データとコンテンツは、最も近いノードから取得されるため、高速で効率的な配信が可能です。また、ネットワークは、ノードの参加と離脱に対して自動的に調整されるため、ダウンタイムやボトルネックが発生しにくくなります。
  • インセンティブとコスト:データとコンテンツの保存と配信に貢献するノードは、ネットワークのトークンによって報酬を得ることができます。また、ユーザーは、必要な分だけデータとコンテンツの保存と配信に対して支払うことができます。

分散化されたストレージのネットワークを選択する際には、以下のような要素を考慮する必要があります。

  • データとコンテンツの種類とサイズ
  • データとコンテンツの保存期間と頻度
  • データとコンテンツのアクセス速度と頻度
  • データとコンテンツのセキュリティとプライバシーの要件
  • データとコンテンツの管理と検索の容易さ
  • データとコンテンツの保存と配信のコストとインセンティブ

分散化されたストレージのネットワークは、主に分散化されたファイルシステム (DFS) と分散化されたデータベース (DDB) に分けることができます。分散化されたファイルシステムは、ウェブ3のアプリケーションの静的なデータとコンテンツ(画像、動画、音声、テキストなど)を保存し、配信することができるネットワークです。分散化されたデータベースは、ウェブ3のアプリケーションの動的なデータとコンテンツ(ユーザー情報、トランザクション履歴、設定など)を保存し、操作することができるネットワークです。

分散化されたファイルシステムのネットワークの例としては、以下のようなものがあります。

  • InterPlanetary File System (IPFS):分散化されたハッシュベースのファイルシステムであり、データとコンテンツをハッシュ値によって識別し、ピアツーピアのネットワークで保存し、配信します。IPFSは、ウェブのアドレッシングと配信の仕組みを変革することを目指しています。
  • Filecoin (FIL):IPFSの上に構築された分散化されたストレージマーケットであり、データとコンテンツの保存と配信に貢献するノードに対してインセンティブを提供します。Filecoinは、ウェブのストレージの仕組みを変革することを目指しています。
  • Arweave (AR):分散化された永久ストレージであり、データとコンテンツを一度保存すれば、永遠に消えることがないネットワークです。Arweaveは、Proof of Access (PoA) というユニークなコンセンサスメカニズムと、JavaScriptに似たプログラミング言語であるSolidityを採用しています。Arweaveは、ウェブの記憶と永続性を高めることを目指しています。

分散化されたデータベースのネットワークの例としては、以下のようなものがあります。

  • BigchainDB:分散化されたスケーラブルなデータベースであり、ブロックチェーンの特徴(不変性、所有権、分散化)と、データベースの特徴(高スループット、低レイテンシー、クエリ機能)を兼ね備えています。BigchainDBは、MongoDBというドキュメント指向のデータベースと、TendermintというBFTのコンセンサスエンジンを組み合わせています。
  • OrbitDB:分散化されたピアツーピアのデータベースであり、IPFSの上に構築されています。OrbitDBは、キーバリュー、ドキュメント、ログ、カウンターなどの様々なデータモデルをサポートしています。OrbitDBは、ウェブ3のアプリケーションのデータ管理と同期を容易にすることを目指しています。
  • Textile:分散化されたピアツーピアのデータベースであり、IPFSとLibp2pの上に構築されています。Textileは、スレッドと呼ばれる暗号化されたデータコレクションを提供しており、ユーザーは自分のデータを自由に管理し、共有することができます。Textileは、ウェブ3のアプリケーションのデータのプライバシーと所有権を高めることを目指しています。

まとめ

ウェブ3のインフラ層を構築するためには、ブロックチェーンと分散化されたストレージのネットワークを選択する必要があります。ブロックチェーンと分散化されたストレージのネットワークは、それぞれ異なる特徴や利点を持っており、ウェブ3のアプリケーションの目的や要件に応じて適切なものを選ぶことが重要です。ウェブ3のインフラ層は、ウェブのサービスを分散化し、ユーザーの権利と自由を保護することを目指しています。

この記事では、ウェブ3のインフラ層を構築するために必要な技術、ツール、プロトコルについて紹介しました。ウェブ3のインフラ層に関心がある方は、以下のキーワードを参考にして、さらに詳しく調べてみてください。

  • ブロックチェーン:EVM、BSC、Polygon、Solana、Polkadot、Cosmos、Cardano、Ouroboros、Tendermint、PoH、PoS、BFT
  • 分散化されたストレージ:IPFS、Filecoin、Arweave、BigchainDB、OrbitDB、Textile、PoA、MongoDB、スレッド

ウェブ3のインフラ層は、まだ発展途上の分野であり、新しい技術やイノベーションが次々と登場しています。ウェブ3のインフラ層は、ウェブの未来を切り開く可能性を秘めています。ウェブ3のインフラ層に注目していきましょう。

ソース
(1) 「分散化(ぶんさんか)」の意味や使い方 わかりやすく解説 …. https://www.weblio.jp/content/%E5%88%86%E6%95%A3%E5%8C%96.
(2) ファンデルワールス力 – Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%B9%E5%8A%9B.
(3) 分子間力が活躍する超分子化学・分子組織化学 – J-STAGE. https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/69/9/69_382/_pdf/-char/ja.
(4) 世界が一変する「Web3」、その動向と今後の発展 – Deloitte US. https://www2.deloitte.com/jp/ja/blog/d-nnovation-perspectives/2022/web3-trends.html.

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