先日、Pi Networkの公式サイトにて公開された「MiCA White Paper (Version 1.1)」。この文書は、単なる形式的な書類ではありません。
全36ページに及ぶその内容は、Pi Networkが長年準備してきた「オープンメインネット」への移行プロセスと、EU市場への参入戦略が具体的に記された「上場の設計図」そのものです。
本記事では、前回お伝えした速報内容をさらに深堀りし、ホワイトペーパーの全訳から判明した「OKXとの関係」「トークノミクスの詳細」「法的リスク」について徹底解説します。
【この記事でわかること】
- 「11月28日 OKX上場」の記述とその実現性
- PiBit Ltd.という新法人の正体
- 1,000億枚の供給量と流動性プールの内訳
- ISO 20022に関する公式見解(記載有無)
公式文書の正体:PiBit Ltd.とは何か?
まず、今回公開されたホワイトペーパーの発行元を確認しましょう。
| 文書バージョン | Version 1.1 (October 2025) |
|---|---|
| 発行主体 | PiBit Ltd. (英領ヴァージン諸島法人) |
| 親会社 | Pi Foundation (ケイマン諸島) |
| 目的 | EU/EEA圏内での取引開始申請 |
ここで注目すべきは「PiBit Ltd.」という法人名です。これは、米国の開発会社である「SocialChain, Inc.」とは別に、トークンの発行と上場管理を行うために設立された特別目的会社(SPV)と考えられます。
MiCA規制は発行体に対して厳格な責任を求めるため、Pi Networkは明確な法的実体(PiBit)を用意し、責任の所在を明確にしたと言えます。
衝撃の記述「OKX」と「11月28日」
ホワイトペーパーの9ページ目と29ページ目には、パイオニアが最も知りたい情報が具体的に記されています。
取引所の明記:OKCoin Europe (OKX)
これまで噂レベルだった上場先ですが、文書にははっきりと以下の記載があります。
“It is intended that Pi will be admitted to trading on… OKCoin Europe Limited (branded OKX)”
(Piは、OKCoin Europe Limited(ブランド名OKX)およびその他のMiCA準拠取引所での取引開始を意図している)
世界トップクラスの取引所であるOKXの名前が公式文書に出たことは、Piが「草コイン」扱いではなく、主要な暗号資産として扱われる準備ができていることを示唆しています。
運命の日:2025年11月28日
さらに、「取引開始予定日(Starting date of admission to trading)」として2025年11月28日という日付が指定されています。
ただし、これはあくまで「申請上の予定日」であり、確定事項ではありません。しかし、運営チームがこの日をターゲットに最終調整を進めている可能性があります。
トークノミクス詳細:1,000億Piの行方
今回の文書では、Piの供給量と配分についても法的拘束力のある形で言及されています。
- 最大総供給量:1,000億 Pi(固定)
- 追加発行(インフレ):なし(False)
- 現在の流通量:約82億 Pi
【重要】発行者保有分の内訳
運営側が保有するトークンについても詳細が開示されました(Page 31)。
- 100億 Pi:財団(Treasury)用資金
- 50億 Pi:流動性プール(Liquidity Pool)用
特に「50億Pi」が流動性プールに確保されている点は重要です。これは上場直後の売り圧力を吸収し、価格を安定させるための「マーケットメイク資金」として機能する可能性が高いです。
法的な「落とし穴」と現実的な解釈
SNSでは「これでEU公認だ!」と盛り上がっていますが、ホワイトペーパーを正しく読むと、より慎重な現実が見えてきます。
EU当局は「承認」していない
文書の冒頭(Page 7)には、MiCA規制のルール通り以下の免責事項があります。
「このホワイトペーパーは、いかなるEU加盟国の管轄当局によっても承認されたものではない」
つまり、これはPi側による「私たちはルールを守りますという宣誓書(届出)」であり、EUがお墨付きを与えたわけではありません。しかし、この届出が受理され、OKXが上場を決定すれば、それは実質的な「合格」を意味します。
トークン分類は「その他」
Piは「電子マネー・トークン(ステーブルコイン)」でも「資産参照トークン」でもなく、「その他の暗号資産(Other Crypto-Assets)」に分類されています。また、「ユーティリティ・トークン」の項目も「False」となっています。
これは、Piが単なるアプリ内ポイントではなく、ビットコインのような「純粋な暗号通貨(レイヤー1通貨)」として規制されることを自ら選択したことを意味します。
EUの画期的な仮想通貨規制「MiCA」とは?
まず、Pi Networkが準拠を目指す「MiCA(Markets in Crypto-Assets)」規制がどのようなものなのか、その基本的な概念と目的を理解することから始めましょう。
MiCAは、EUがデジタル資産市場に包括的な法的枠組みを与えることを目的として導入した、画期的な規制です。これは、暗号資産の定義、発行、取引、サービス提供など、多岐にわたる領域をカバーします。
- 仮想通貨市場の透明性と健全性を確立: MiCAは、投資家保護を強化し、市場の安定性を高めることを目指しています。銀行や証券市場のような既存の金融市場と同等の規制を適用することで、デジタル資産に対する信頼性を向上させます。
- 消費者保護と市場の健全性: 資金洗浄(マネーロンダリング)やテロ資金供与の防止、市場操作の抑制など、さまざまなリスクから消費者と市場を守ります。
- MiCAがブロックチェーンプロジェクトに求めるもの: 発行者に対する明確な情報開示義務(ホワイトペーパーなど)、市場操作防止のためのルール、サービスプロバイダー(取引所など)への免許制導入など、厳格な要件を課します。
Pi Network、MiCA準拠に向けた具体的な動きと戦略
Pi Networkは具体的にどのようにMiCA規制への準拠を目指し、Mainnetローンチへの準備を進めているのでしょうか。ここでは、一部コミュニティ内で共有されている情報に基づき、その主要なポイントと具体的なスケジュールに焦点を当てます。
2025年11月が示す「公開オファー」と「情報開示」の展望
一部情報源によると、Pi Networkは2025年11月28日を「公開オファー」の開始日として検討しているとされています。これは、MiCA規制下でPiのデジタル資産が一般にアクセス可能になる日を指す可能性があります。
また、その前日である2025年11月27日には、MiCAが義務付ける全ての必要文書(トークンの構造、運用詳細、リスク開示など)を公開する予定であるとも報じられています。これは、Pi Networkが透明性を重視し、規制要件に真摯に向き合っている姿勢を示すものです。
【客観的な注記】
これらの日付は一部コミュニティ内で議論されている情報であり、Pi Networkの公式アナウンスによる最終決定ではない可能性もあります。常に公式情報源を確認することが重要です。
Pi Networkの特性がMiCA規制と合致する理由
Pi NetworkがMiCA規制への準拠を目指す背景には、その技術的・経済的特性がMiCAの要件と高い親和性を持つことが挙げられます。
- レイヤー1の独立したデジタル資産: Piは、他のブロックチェーン上に構築された「トークン」ではなく、独自のブロックチェーン上で稼働する「コイン」です。これは、自律性が高く、MiCA規制下でより強い技術的自立性と信頼性を確保しやすいとされています。例えるなら、独自の国を運営するようなものです。
- 最大供給量1000億Pi: MiCAは、デジタル資産の透明性を高めるため、明確なトークノミクス(経済モデル)を求めています。Pi Networkは、最大供給量を1000億Piと明示しており、これにより経済モデルの透明性と予測可能性を提供し、将来的な恣意的な変更の可能性を低減しています。
- 「ユーティリティトークン」としての位置づけ: MiCAの下で、Piは株式や議決権、法的義務を伴わない「ユーティリティトークン」として分類される可能性があります。これは、特定のプラットフォーム内で利用価値を持つデジタル資産を指し、証券として扱われる場合よりも規制要件が緩和され、より広範なユーザーアクセスが可能になることを意味します。Piは、Piアプリ内での様々なサービスやエコシステムにおいて利用されることを想定されています。
- 非カストディアルウォレット: Pi Networkはユーザーの資産を保管しません。ユーザーは自身の秘密鍵を完全に管理し、Piの所有権を保持します。これはMiCAが重視する分散化、自己保管、ユーザーの自律性と完全に一致しており、銀行ではなく、自分自身が完全に管理する財布を持つイメージです。
- Stellar Consensus Protocol (SCP) ベースのブロックチェーン: Piのブロックチェーンは、Stellar Consensus Protocol(SCP)を基盤としています。SCPは、高い取引処理能力(スループット)、低い取引手数料、堅牢なスケーラビリティ、そして実世界での信頼性で知られる実績のあるコンセンサスメカニズムです。この技術的基盤は、Piが高速かつ効率的で、強靭なレイヤー1ネットワークであることを裏付けています。
MiCA準拠がPi Networkにもたらす影響と将来展望
MiCA規制への準拠は、Pi Networkの単なる法的要件のクリアにとどまらず、その将来性に大きな影響を与える可能性があります。ここでは、MiCA準拠がPi Networkにもたらす具体的な影響と今後の展望について考察します。
- 欧州市場での法的地位の確立とアクセシビリティ向上: MiCA準拠は、Pi NetworkがEU域内で法的に承認されたデジタル資産として運営される道を開きます。これにより、欧州の幅広いユーザーや企業が、より安心してPiを利用・取引できるようになります。
- 実世界での商業利用への道: 法的信頼性が高まることで、Piを決済手段として受け入れる企業や、Piを活用した新しいサービス・アプリケーションの開発が加速する可能性があります。これにより、Pi Networkが目指す「実世界での商用利用」が現実味を帯びてきます。
- 企業・機関からの信頼度とパートナーシップの可能性: 厳格なMiCA規制に準拠することは、企業や金融機関からの信頼を大きく向上させます。これにより、Pi Networkは、より大規模なパートナーシップや投資の機会を引き寄せ、エコシステムの成長をさらに加速させることができるでしょう。
- コミュニティ主導から「透明で準拠したグローバル経済」へ: Pi Networkはこれまで、大規模なコミュニティに支えられた実験的なプロジェクトとしての側面が強かったですが、MiCA準拠は、これを「法に準拠し、透明性が高く、グローバルに通用するブロックチェーン経済」へと変革させる大きな一歩となります。これは、Pi Networkが単なる暗号資産の枠を超え、世界経済の一部となる可能性を示唆しています。
よくでる疑問:ISO 20022はどうなった?
Pi Network界隈で長く噂されている「ISO 20022(国際金融通信規格)への準拠」ですが、結論から言います。
本ホワイトペーパー内には、ISO 20022に関する記述は一切ありません。
全36ページを精査しましたが、「ISO」という単語すら登場しません。技術仕様(Page 33)には「Stellar Consensus Protocol (SCP) をベースにした独自のFBA」とだけ記載されています。
Stellar自体はISO 20022準拠ですが、Piが公式にそれに準拠するかどうかは、現時点ではまだ「未確認情報」として扱うべきです。
11月28日は期待できる?
今回公開されたホワイトペーパーは、Pi Networkがこれまでの「社会実験」フェーズを終え、法的な責任を伴う「金融商品」として世界市場に出る覚悟を決めた決定的なホワイトペーパーです。
- 日付:2025年11月28日(予定)
- 場所:OKXおよびMiCA準拠取引所
- 準備:運営は法的な整備(PiBit設立、MiCA対応)を完了
あとは、その日が来るのを待つのみです。

