Pi2DAY Pi NetworkがAI戦略を始動。「Pi App Studio」と新構想で目指す未来とは?

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スマートフォンでの参加型マイニングで世界的に巨大なコミュニティを形成してきたPi Networkが、次なる一手としてAI(人工知能)分野への本格的な参入を表明しました。2025年の「Pi2Day」に合わせて行われたこの発表は、単なる新機能の追加にとどまらず、プロジェクトが目指すエコシステムの未来像を具体的に示す、極めて戦略的な一手と言えるでしょう。

彼らが提示するのは、AIがもたらす社会的な課題に対し、ブロックチェーン技術を用いて独自の解決策を提供するという壮大なビジョンです。本記事では、新たに発表された中核機能「Pi App Studio」「Ecosystem Directory Staking」、そして周辺を固める重要な技術アップデートの全貌を、客観的かつ体系的に解説します。

記事の要約元 公式ブログより
https://minepi.com/blog/pi2day2025/

Pi Networkが提唱する「AI時代の課題」と「ブロックチェーンの役割」

なぜ今、Pi NetworkはAIに注目するのでしょうか。その背景には、AI技術が急速に進化する現代社会が直面しつつある、本質的な課題に対する彼らなりの認識があります。

AIがもたらす3つの課題

Pi Networkは、AIが社会に浸透する上で、解決されるべき以下の3つの大きな課題が存在すると指摘しています。

  1. AIアプリケーション層の未熟さ:高度なAI基盤技術と、それを実社会で活用する具体的なアプリケーションとの間に、まだ大きな隔たりがあること。
  2. 人間の労働・知性の役割:AIが生産活動の多くを代替する世界で、人間の労働や知性がどのような役割を担うのかが不透明であること。
  3. 富の分配の不平等:AIが生み出すであろう莫大な生産性の向上の恩恵が、一部の企業や個人に集中し、格差を拡大させてしまう懸念。

Pi Networkの解決策:ブロックチェーンによる「価値の分配」

これらの課題に対し、Pi NetworkはAIとブロックチェーン技術の融合を解決策として掲げます。ここで興味深いのは、そのアプローチの独自性です。

多くの「分散型AI」プロジェクトが、AIの学習データや計算処理プロセスそのものをブロックチェーンで分散化することに焦点を当てる中、Pi Networkはよりマクロな視点を提示します。それは、ブロックチェーンを、AIが生み出した「生産物や価値」を、社会全体に公平かつ包括的に「分配・再分配」するためのスケーラブルな基盤として活用するという考え方です。

AIが生み出す富を一部が独占するのではなく、エコシステムの参加者である「本物の人間」に、ブロックチェーンを通じて公正に還元する。これがPi Networkのビジョンの核心です。

このビジョンの実現には、本人確認(KYC)によって証明された膨大な数の実在する人間、そして彼らが参加する活発なソーシャルネットワークが不可欠であり、Pi Networkはまさにその基盤をすでに有していると主張します。

中核機能「Pi App Studio」とは?誰もがアプリ開発者になる時代の到来

この壮大なビジョンを実現するための中核エンジンとなるのが、新たに発表された「Pi App Studio」です。これは、アプリケーション開発のあり方を根本から変える可能性を秘めた、革新的なプラットフォームです。

生成AIを活用したノーコード・アプリ開発プラットフォーム

Pi App Studioの最大の特徴は、プログラミングの専門知識を必要としない点にあります。ユーザーは、まるで人間と対話するように、作りたいアプリのアイデアや要件を自然言語(日常で使う言葉)で入力するだけです。すると、生成AIがその指示を解釈し、アプリケーションを自動で構築してくれます。

他のAIツールとの違いとして、Pi Networkは「ガイド付きワークフロー」「巨大なユーザーベースへのアクセス」を挙げています。単にツールを提供するだけでなく、製品開発のノウハウがない人でもアイデアを形にできるよう導き、数千万人のコミュニティから即座にフィードバックを得られる環境を用意することで、実用的な製品開発を支援します。

2つの開発オプション:特化型チャットボットと自由なアプリ創造

今回リリースされたPi App Studioでは、主に2つの開発オプションが提供されています。

  1. トピック特化型チャットボットの作成:開発者自身の専門知識や知見をAIに学習させ、特定のトピックについて質の高い応答ができるカスタムチャットボットを作成するワークフローです。単なる質疑応答にとどまらず、ステップバイステップのウィザード、インタラクティブなクイズ、推薦エンジンなど、多様な形式のアプリケーションへの応用が期待されています。
  2. オープンなアプリ開発プラットフォーム(ベータ版):より自由な発想で、頭の中にある任意のアプリケーションをコーディングなしで構築できるプラットフォームです。まだベータ段階にありますが、将来的には様々なタイプのアプリ創造が可能になることが示唆されています。

作成されたアプリは、Pi Ad Network(広告ネットワーク)や.pi Domains(独自ドメイン)と連携し、収益化を目指すことも可能です。

もう一つの新機能「Ecosystem Directory Staking」の仕組み

優れたアプリが数多く生まれても、ユーザーに発見されなければ意味がありません。その課題を解決するために導入されたのが「Ecosystem Directory Staking」という新機能です。

これは、ユーザーが自身の保有するPiを、応援したい特定のアプリに一定期間預け入れる(ステークする)ことで、そのアプリを支援できる仕組みです。ステークされたPiの量に応じて、アプリはエコシステム内のディレクトリ(一覧ページ)でより目立つ位置に表示されます。このメカニズムは、広告費の多さではなく、コミュニティ全体の集合知によって、本当に価値のあるアプリが評価されることを目指した、分散型のランキングシステムと言えるでしょう。

エコシステムを支える重要な技術アップデート群

今回の発表には、これら2つの主要機能に加え、エコシステム全体の基盤を強化するための複数の重要な技術的アップデートも含まれています。

アクセシビリティ向上:Onramperの統合

Pi Walletに、サードパーティのKYB(法人版KYC)認証済みオンランプサービス集約ツールである「Onramper」が統合されます。これにより、ユーザーは各地域の規制に準拠した形で、法定通貨からPiエコシステムに参加するための手段を選びやすくなり、アクセシビリティが向上します。

ノード機能の強化と可視化 (v0.5.2)

Piネットワークの根幹を支えるノードソフトウェアにも、バージョン0.5.2として複数の重要なアップデートが実施されました。

  • 名称変更と機能拡張:従来のノード専用アプリケーションは「Pi Desktop」へと名称が変更されました。これは、Pi App StudioをPCの大画面で利用するなど、今後はノード運用に関連しない機能も統合していくための、より汎用的なデスクトップアプリとしての位置付けを明確にするものです。ウィンドウサイズが変更可能になるなど、ユーザビリティも向上しています。

 

  • ノードランキングページの公開:Pi Blockexplorer上で、パフォーマンスの高い上位5,000のPiノードがランキング形式で公開されるようになりました。ランキングは24時間ごとに更新され、以下の主要な指標に基づいて評価されます。
    • 信頼性
    • 可用性
    • ポートの開放状態
    • 総アクティブ日数
    • CPUパフォーマンス

    これにより、ネットワークに安定して貢献している優良なノードが可視化され、ユーザーは自身のノードの公開鍵を使ってランキング上の位置を確認できます。

KYCとメインネット移行の加速

KYC(本人確認)プロセスとメインネットへの移行においても改善が行われました。特に、特定の地域で固有の課題を抱えていたユーザーの問題を解決するアップデートにより、新たに50万人以上のパイオニアが移行ブロックを解除され、メインネットへの参加が可能になりました。

開発者支援:.piドメインオークションの延長

Pi App Studioのリリースに伴い、多くの開発者が自身のアプリにユニークで覚えやすいWeb3識別子を確保する必要が出てきました。これに応えるため、.piドメインのオークション期限が2025年9月30日まで延長されました。

補足:期間限定のインタラクティブ・チャレンジも開催

今回の新機能リリースを記念し、Pi Networkは「Pi2Day Ecosystem Challenge」を開催しています。このインタラクティブなチャレンジを通じて、ユーザーは今回発表された新機能を含むエコシステムの様々な特徴を体験し、デジタルな記念品を受け取ることができます。

まとめ:AIとブロックチェーンの交差点で、Pi Networkは新たな価値を創出できるか

今回、Pi NetworkはAI戦略を本格的に始動させ、その中核として、誰もがアプリ開発者になれる「Pi App Studio」と、コミュニティ主導の評価システムである「Ecosystem Directory Staking」を発表しました。

その根底には、AIが生み出す富を一部の巨大資本が独占する未来ではなく、ブロックチェーン技術を用いてその価値を社会に広く、そして公平に分配するという、極めて野心的なビジョンが存在します。ノード機能の強化やKYCプロセスの改善といった周辺を固める数々の技術アップデートは、このビジョンが単なる絵空事ではなく、具体的な実行計画に基づいていることを示しています。

もちろん、この壮大な構想が成功するかは未知数です。その成否は、今後、Pi App Studioからどれだけ魅力的で実用的なアプリケーションが生まれ、世界中のユーザーに受け入れられていくかにかかっています。今回の発表は、その挑戦に向けた強固な土台が築かれたことを示す、重要な一歩であることは間違いありません。

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