仮想通貨の世界でよく見かけるアリスとボブとは？暗号通信の基本をわかりやすく解説

仮想通貨に興味がある方なら、アリスとボブという名前を聞いたことがあるかもしれません。アリスとボブは、仮想通貨の技術やプロトコルを説明するときによく使われる架空の人物です。では、なぜアリスとボブが仮想通貨の世界で重要なのでしょうか？この記事では、アリスとボブの由来と役割、そして仮想通貨における暗号通信の基本をわかりやすく解説します。

アリスとボブの由来と役割

アリスとボブは、1978年に発表された暗号技術の画期的な論文 ¹で初めて登場しました。この論文では、公開鍵暗号という方式を提案しました。公開鍵暗号とは、メッセージの送信者と受信者がそれぞれ公開鍵と秘密鍵という2種類の鍵を持ち、公開鍵で暗号化し、秘密鍵で復号するという方式です。この方式では、公開鍵は誰にでも知られても構いませんが、秘密鍵は絶対に漏らしてはいけません。公開鍵暗号は、インターネットや仮想通貨などの分野で広く使われています。

この論文では、公開鍵暗号の仕組みを説明するために、メッセージの送信者をA、受信者をBと呼びました。そして、それぞれの人物にアリスとボブという名前をつけました。この名前は、アルファベットの頭文字との関連性や、人間らしい感覚を持たせるために選ばれたと考えられます。以来、アリスとボブは、暗号技術やコンピュータセキュリティなどの分野で、様々なシナリオやプロトコルを説明するときに使われる典型的なキャラクターとなりました。

アリスとボブの他にも、暗号通信に関係する人物や役割には、以下のような名前が使われます。

イブ (Eve): 盗聴者 (eavesdropper) の頭文字から。アリスとボブのメッセージを傍受しようとする悪意のある第三者です。メッセージの内容を読んだり、改ざんしたりすることはできません。
マロリー (Mallory): 邪悪な攻撃者 (malicious attacker) の頭文字から。アリスとボブのメッセージを傍受し、内容を読んだり、改ざんしたりすることができる悪意のある第三者です。
トレント (Trent): 信頼された調停者 (trusted arbitrator) の頭文字から。アリスとボブの間に立って、正しい鍵や証明を提供する中立的な第三者です。
パット (Pat) とビクター (Victor): 証明者 (prover) と検証者 (verifier) の頭文字から。パットはビクターに対して、何かを証明しようとする人物です。ビクターはパットの証明を検証しようとする人物です。例えば、パットはビクターに自分が秘密鍵を知っていることを証明しようとしますが、秘密鍵自体は教えません。これをゼロ知識証明と呼びます。

仮想通貨における暗号通信の基本

仮想通貨は、ブロックチェーンという分散型のデータベースによって管理されています。ブロックチェーンとは、取引の記録をブロックと呼ばれる単位にまとめて、暗号技術によって連結したものです。ブロックチェーンには、ネットワークに参加する誰もがアクセスできますが、改ざんや偽造はできません。ブロックチェーンは、仮想通貨の取引の正当性や所有権を保証する役割を果たします。

仮想通貨の取引は、アリスとボブのような参加者が行います。アリスは、自分の仮想通貨のアドレスと秘密鍵を持っています。アドレスは、公開鍵から生成されたもので、仮想通貨の送受信に使われます。秘密鍵は、自分のアドレスに対応するもので、仮想通貨の支払いに使われます。アリスは、自分の秘密鍵で取引に署名し、ネットワークに送信します。ネットワークには、マイナーと呼ばれる人々がいます。マイナーは、アリスの取引を検証し、ブロックに追加します。ブロックに追加された取引は、ブロックチェーンに記録されます。ボブは、ブロックチェーンを参照して、アリスから仮想通貨を受け取ったことを確認できます。

このように、仮想通貨の取引は、アリスとボブの間に信頼できる第三者がいなくても、暗号技術によって安全に行われます。アリスとボブは、自分の鍵やアドレスを管理することで、仮想通貨の所有権や支払い能力を証明できます。イブやマロリーは、アリスとボブの鍵やアドレスを知ることができないので、取引を妨害したり、仮想通貨を盗んだりすることができません。トレントやパットやビクターは、ブロックチェーンによって不要になります。ブロックチェーンは、取引の正当性や検証を自

自動化し、透明性や信頼性を高めます。仮想通貨の世界では、アリスとボブは自分の鍵やアドレスを使って、自由に取引できます。暗号技術は、アリスとボブのプライバシーやセキュリティを保護します。

記事に登場したキーワードの説明

仮想通貨 (virtual currency): ネットワーク上で発行され、取引される電子的な通貨のことです。中央機関や政府によって管理されず、暗号技術によって安全性や正当性が保証されます。ビットコインやイーサリアムなどが有名です。
ブロックチェーン (blockchain): 取引の記録をブロックと呼ばれる単位にまとめて、暗号技術によって連結した分散型のデータベースのことです。誰もがアクセスできますが、改ざんや偽造はできません。仮想通貨の取引の正当性や所有権を保証する役割を果たします。
公開鍵暗号 (public-key cryptography): メッセージの送信者と受信者がそれぞれ公開鍵と秘密鍵という2種類の鍵を持ち、公開鍵で暗号化し、秘密鍵で復号するという暗号技術の方式です。公開鍵は誰にでも知られても構いませんが、秘密鍵は絶対に漏らしてはいけません。インターネットや仮想通貨などの分野で広く使われています。
ゼロ知識証明 (zero-knowledge proof): 証明者が検証者に対して、何かを証明しようとするときに、証明する内容に関する情報を一切教えないで証明できるという暗号技術の方式です。例えば、証明者は検証者に自分が秘密鍵を知っていることを証明しようとしますが、秘密鍵自体は教えません。仮想通貨の分野では、プライバシーやスケーラビリティの向上に役立ちます。